アップリカ本社ビルディング
APRICA HEADQUATER BUILDING
設計・建築 | 丹家健三・都市・建築設計研究所、中川巌・建築綜合研究所 |
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構 造 | 梅沢建築構造研究所 |
設 備 | 総合設備計画 |
施 工 | 野村建設工業 |
敷地面積 | 314.27㎡ |
建築面積 | 219.79㎡ |
延床面積 | 1,405.23㎡ |
階 数 | 地下1階 地上8階 塔屋1階 |
構 造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 |
工 期 | 1988年1月~1989年2月 |
大阪中央区,通称“ヨーロッパ村”と呼ばれる周防町通りは、もっともファッショナブルな 街として発展しつつある地区で、その一画に育児教室の拠点となる本社ビルを計画した。 今日の都市における建物は、地価高騰や複雑化する建築法規制の下で、以前にも増して高い 有効比が求められる。そこでこの建物は斜線制限に容易に対応でき、外部スペースを積極的に取り入れ、施工床面積を増やすことができる正三角形の断面を持つプリズムを積み重ねた形態とした。
アルミパネルやガラスでできた三角プリズムは、オフィス,談話コーナー,そして緑のあるテラスといった機能を持ちながら連続し、内部空間を広く感じさせると共に、四季や時間の移り変わりに伴う微妙な光の変化を映し出す。
いっぽう、内部空間は、家相学や易学のもとになったといわれる古代中国の宇宙観をその
手掛かりとしてデザインした。すなわち、中央には土であり黄帝の色である黄色を配し、
東西南北には守護神のシンボル“蒼龍” “白虎” “朱鳥” “玄武”の色である青,白,朱,黒を配し空間に方向性と特色を与えた。
構造は、南北方向の鉄骨鉄筋コンクリート造壁と東西方向の鉄骨梁からなるラーメン構造。
設備は、3,5,7階のバルコニーに屋外機を設置することにより、分散制御をおこなっている。建物の1,2階は街路空間を内部化した広場である。
エントランスホールから2階への緩やかなアプローチは、大地から天に通じるイメージで計画した。
階段をのぼるにしたがって、床は堅い御影石から大理石、柔らかいカーペットへと変化していく。また、自然の光と風が建物の西南から東北へと抜けていく様子を人工の光で演出し、鬼門除けとした。この広場は、企画展示や市民の憩いの場として、また公園の少ない街区の中で、市民のためのポケットパークとして開放されている。
3,4,5階のオフィスのコーナーなは、4つの守護神の色を配し、床にもその色をうちの
ひとつをちりばめ、無機質で単調になりがちなオフィス空間に変化を与えた。
6階の子供のための展示室および7階の老人のための展示室には、4色に塗り分けられた
天井の下にアルミルーバーを設け、光の変化を楽しむことができる企画展示スペースと
した。最上階の8階には、応接室,和室の執務室,社員サロンなどがある。
こうしたサロンや屋上庭園,テラス,オフィス階の談話コーナーなどは、創造性豊かな仕事をするためのリフレッシュの場として、これからのオフィスには欠かすことができない重要なスペースである。
さらには、市民に開放された広場やイベント空間を備え、空に向かって拡がる形態をしたこの建物は、発展する街区のあたらしいシンボルとして豊かな都市空間の形成に寄与するであろう。(中川 巌)